冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
私と今日子が先に飲んでいると、30分遅れで進藤が『246』にやってきた。
LINEのグループは、ここでこうして飲む時によく使われる。
「進藤、お疲れ様。」
カウンターが私達の指定席になっていた。
週末の予定なんて、人それぞれ。
三人揃う時もあれば、一人の時もあるから、カウンターがちょうどいい。
テーブルで飲んだのなんて、三人で初めて来た日だけだった。
今日は進藤の話を聞く前提で集まったのだから、進藤が真ん中。
「お疲れさまです。」
進藤も当たり前のように真ん中へ座った。
マスターに「ビールお願いします。」と言う進藤の顔を私達は両方から覗き込む。
かなり接近した距離だ。
「な、なんですか…!近いですよ!」
進藤は右も左も向けず、まっすぐ見たまま。
「なんだ…落ち込んでないんだ。」
今日子がすぐに離れて行った。
私は進藤の顔をもう一度じっくり見て真意を探ってみたけど、いつもと変わらない。
「なにがですか?」
進藤は本気で不思議がってる。
「進藤がコツコツやってた図面ファイルの電子化。
あれ、最後に佐藤に横取りされてるじゃん。あいつってそう言うところあるんだよ!」
過去に私も今日子も誰もわからないような小さな仕事だけど、根こそぎ持っていかれたことがある。
「ああ、あれですか?…別になんとも…」
「「なんで!!!!」」
私と今日子が一緒に叫ぶ。
進藤は本気で驚いて、カウンターのスツールから落ちそうになっていた。
「進藤の仕事を美味しいところだけ持って行っちゃったんだよ。
担当者だって佐藤の名前になってるし、せこいじゃん!」
と、今日子が怒り出す。
「そうですか?
自分は仕事のノウハウさえ覚えられれば問題ないです。」
「「問題なくないよ! 進藤、出世できないよ。」」
また、私と今日子が一斉に声を荒げる。
「僕は出世とかあまり…興味がなくて…」
とボソボソと呟いている進藤の声は私達が興奮していて聞こえてない。
するとマスターが進藤のビールをテーブルに置いて
「まぁ、まぁ、進藤くんが良いって言うんだから、二人も興奮しないで!
進藤くん、二人はキミの事を心配してるんだよ。」
するとビックリして進藤が首が左右に動き、私と今日子を見て顔を赤らめる。
「・・・ありがとうございます。」
と、俯いた。