冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
店員さんと話しながら、気に入ったデザインを左手の薬指にはめている今日子の顔は本当に幸せそうだ。
今日子が選んだデザインは、中央に大きなダイヤ、左右に小粒のダイヤが何個も並んでいて今日子のキレイな手によく似合う。
「キレイだね・・・」
私はキラキラするリングをじっと見て思わずそんな言葉を洩らしてしまう。
「夏希はどういうのが好み?」
「私は・・・」
と、ショーケースを行ったり来たり。
「あっ!」
大きすぎず小さすぎず、丁度良い大きさの一粒ダイヤが付いているシンプルなデザインを指さした。
「ありきたり!」
と言いながら、今日子がその指輪を店員に出してもらう。
「えっ?」と躊躇う私に
「試しに付けるのはタダなんだから良いじゃん」
と、私に耳打ちする。
スエード調のジュエリートレイに、さっき私が指さした一粒ダイヤが乗せられていた。
白い手袋をした店員に導かれるようにそっと左手薬指を差し出す。
すーっと指になじむシンプルなリング。
「ステキ・・・」
私は思わず自分の薬指に見とれていた。
正確には薬指にはめたリングに。
「少しサイズが大きいみたいですね。お計りしますね。」
と、店員は一粒ダイヤを私の指から抜き取り、その代わりにリングゲージを持って来て左薬指のサイズを測っていた。
仕事で慣れているのだろう。
二回だけゲージを入れ替えて私の指のサイズを「8」ですねという。
指輪のサイズなんちゃんと計ったのは初めてだった。
そんな私と店員のやりとりをいつになく真剣に今日子が見ていたことに、その時は気が付かなかった。