冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
成二と玲奈の結婚披露パーティにて
7月の第一日曜日。大安。
とうとう成二と玲奈の結婚披露パーティの日がやってきた。
成二とはあれから逢うことは無かったけれど、一度だけメールが送られて来た。
「あの時はごめん。どうかしてた。」
たったそれだけだった。
それだけでもメールが無いよりはましだ。
結婚式は親族のみで行われ、披露パーティは立食という形で友人を集めてレストランで行われていた。
軽装でお越しくださいと招待状に書かれていたものの、みんなそれなりにおめかしをしている。
私はボルドーのワンピースに黒のボレロという大人っぽい装い。
ワンピースは質の良いシルク素材。
膝丈のAラインが大人っぽさの中に甘さを加えている。
本当はクリーム色のふわっとしたワンピースを用意していた。
少し子供っぽかいかなと思っていたところに、今着ているドレスを響さんにプレゼントされた。
パーティの数日前、進藤の家に遊びに行ったら、響さんが待っていた。
「一目惚れして買ってみたけど、妊婦で着れなかった。」
という買う前に考えればわかるような理由で私に着て欲しいと手渡してくれた。
その割には、私にサイズがぴったりだった。
上質なドレスは一目見ただけで気に入ったのだけど、黒いヒール7cmの靴まで用意されていたから驚いた。
だって靴のサイズもぴったりだったんだもん。
響さんのコーディネートに身を包み、ハーフアップにしたヘアスタイルは
いつもと違う自分を映しだしてくれた。
けれど、中身まではランクアップされるわけではない。
当たり前に緊張している。
今日子と大木さんと望美さんがそばにいてくれているけど、やはり人の目が気になる。
同期は私のことも成二のことも玲奈のこともわかっているから、先日から流されている私と成二の妙な噂は、たいして気にしていない様子だったけれど、企画部の女性たちは少し違った。
さっき化粧室で聞こえて来た会話は私への中傷だった。
私が個室にいるなんて思いもせずに話し出したのだろう。
平岡さんを誘惑しておいて、よく普通にココに来られるという内容だ。
「玲奈さんが言ってたけど〜」という話からどうやらこの噂には尾ひれを付けて玲奈自身がふれ回っていたらしい。
個室から出るに出られずにいた。
力が入らない。
しばらくすると、化粧室からなかなか帰って来ないと心配した今日子が様子を見に来てくれた。
その途端、彼女たちはピタッとおしゃべりをやめ出て行った。
すべてを察した今日子は、それからは私のそばにずっといてくれる。
大木さんも望美さんも私のそばから離れない。
まるで私を守ってくれているように。