冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
【番外編】あまあま新婚旅行
昨日、結婚式を無事に終えた私たちは新婚旅行に向けて出発準備をしている。
なのに…亮介はご機嫌ナナメ。
「海外に行こうって言ったのに…」
「もうその話は決着がついているでしょ?多忙な時期なのに隆之介さんたちが融通をきかせてお休みをくれただけありがたく思わなくっちゃ」
「姉貴たちはセブ島に行ってた!1週間も!」
「でも結婚してすぐじゃないじゃない。響さんの出産を終えて隆之介さんの仕事も落ち着いた時期だったでしょ?」
「1週間は行ってた」
「熱海3日の何が不満?」
「もう熱海3日って言葉だけで不満。沖縄だって北海道だってあるのにどうして熱海なんだよ」
拗ねた口調だけど、実は二人ならどこでも良いってわかってる。
「亮介〜、3日間だけど、セブ島1週間以上に濃い時間にしよう、ねっ?」
上目遣いで亮介を見る。
ゴクと喉を鳴らし焦る亮介を見て思わずニヤける。
「…夏希…誘ってる?!」
結婚が決まってから私は意識をして亮介と名前で呼ぶようになった。
亮介はいつの間にか私を〝夏希〟と私を呼び捨てで呼ぶようになり、距離がどんどん縮まった。
特にこんな時は名前を強調して詰め寄って来る。
それを無視して忘れ物が無いか荷物を再確認している私を亮介が背中から抱きしめた。
亮介の長い腕が背中から周り、私のお腹の辺りで手を組む。
その手がTシャツの裾をまくりあげた時…
ピシッ!
容赦なく亮介の手を叩いた。
「イテ!」
「今、サカらないで!もう早く出ないと新幹線の時間に間に合わないよ」
「チェッ!」
唇を尖らせて舌打ちをする亮介を軽く睨みながら。その唇にチュッと触れるだけのキスをした。
「えっ?はっ?」
不意打ちのキスに顔を真っ赤にしてうろたえる亮介。その可愛い姿を見るとキュンとする。
だから、ちょっとしたイタズラ。
「さ、行こう!」
うろたえたまま動けない亮介に荷物をドンと押し付けて、玄関へ向かう。
ドタドタと慌てて後を追いかけて来る亮介の気配を背中で感じ、またキュンとする。
動き易いようにロールアップしたデニムに白いスニーカーを合わせた。夏の暑さで鬱陶しいセミロングの髪の毛もルーズにアップしてある。玄関でスニーカーを履いていると、アップしている為に露になっている首すじに吸い付くように亮介が唇を寄せた。
「ちょ、ちょっと!何やってんのよ」