冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
進藤が作って佐藤に横取りされた図面の電子管理システム。
今まで面倒くさがって誰も手をつけなかった業務だった。
それがあっという間に出来上がり、図面を探す時間が短縮されたと設計者には大好評。
佐藤の株がどんどん上がってる。
私からしたら、その逆に佐藤の株は急降下。
そんな佐藤が珍しくCADルームにやって来た。
「正野ちゃん、電子化されて図面がすぐにみつかるでしょ?どう、使ってて。
感想や要望があったら今後の参考にしたいんだ。」
私のCADの横にくっついて、少し大きめの声で話してくる佐藤。
今、CADルームには設計者が何人もいる。
佐藤の自己アピールなんだろう。
進藤が異動して来てから『246』では仲良しの私達だけど、仕事場では決してそう言う素振りは見せない。
佐藤は、私達と進藤が良く話をしている事を知らないんだろうな。
「とっても使い易いですよ。」
進藤がやってくれたお陰でね。
「あ、でもひとつ。
佐藤さん、図面をテーマごと、グループごと、部品ごとでセレクトして引っぱり出せますよね?
あと設計者別でもセレクトできるとありがたいです。」
私がもっともらしく提案する。
「そっか、設計者でセレクトできるとまた便利だね。了解です!」
まるで俺はできる男で、女性の意見も聞くよと言う顔をした佐藤を今日子が容赦なく蹴落とす。
「あれ?夏希、それ、もうシステムに入ってるよ。ほら!」
と、設計者別に並ぶ図面リストを見せる。
「あ、ホントだ!」
と、私がわざとらしく声をあげる。
「これ佐藤さんが作ったんですよね? おかしいなぁ、知らなかったとか?」
今日子のしてやったり顔。
「えっ?あっ!えっと、それは便利かなと思って後から付け加えた機能だから、ちょっと頭から抜けてた…
すでにシステムに入ってるよな。そうだった!うん、じゃ、使ってみて!」
とだけ言って、そそくさと佐藤はCADルームから出て行ってしまった。