冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
成二と小沢玲奈が私達を見て少し驚いた顔をしている。
「あ、平岡さん…。」
最初に言葉をかけたのは進藤だった。
「ああ、偶然だな。」
成二は私達を交互に見て、一瞬、眉間にシワを寄せた。
私は身動きも取れず成二から目を逸らした。
気まずい。しばらくの沈黙。
すると隣にいた玲奈が満面の笑みでその沈黙を破った。
「夏希ちゃん、偶然だね。進藤くんと?」
彼女はいちオクターブ上がった甲高い声でしゃべってくる。
首を傾げて女子力全開のスマイルを振りまく。
わざとらしくハッと驚くふりをした玲奈は
「もしかして二人付き合ってるの?」
と、ニヤニヤしていた。
付き合ってる事を公にしていなかった私と成二のことを、進藤も玲奈も知らないのだから、ここは自然に振る舞わなかればいけない。
でも、そう思えば思う程、ぎこちなくなる。
どうして良いかかわからなくなり、私が俯きかけた時だった。
進藤はそっと私の手を握って来た。
え?
咄嗟のことに驚いたけれど、そのぬくもりと安心感に私の固まった身体が溶かされて行く。
「そう見えます?」
と、進藤がどちらとも取れる答え方をすると
「だって、良い雰囲気。」
と玲奈が私達の繋いでる手をチラッと見た。
その手に成二の視線も動いたけど、ちょうど店員がやって来て成二たちを案内する声が聞こえた。
「じゃ…」とだけ挨拶して私達はその場を離れた。