冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
送別会での出来事
成二たちと遭遇してから1週間後の週末。
今日は定年退職をする事業部長の送別会。
事業部長ということは、設計部も営業部も、そして成二のいる企画部と部内すべてが集まる。
入社当時から何かと目をかけてくれた事業部長の送別会だから出席したい気持ちと、成二や玲奈に逢いたくない気持ちで憂鬱な気分だ。
「大丈夫?」
今日子も少し心配してくれている。
「平気...かな。」
私はなるべく企画部を避けながら、設計部の席の中でも端の方に座っていた。
隣には今日子と進藤がいる。
私にとってはベストポジションだ。
送別会も中盤になり、みんな事業部長へお酌しながら挨拶をしている。
私もさきほど済ませて来たので、少し気を抜きながら飲んでいると今日子が耳打ちして来る。
「へぇ…進藤って人気あるじゃん。」
と元々進藤が所属していた企画部が座ってる席にいつの間にか混ざっていた。
周りには企画部の女性が代わる代わるお酌してガンガン呑まされている。
「いや、あれ、からかわれてるのか?
悪ふざけして呑まされてない?」
冷静に今日子が進藤の様子を見ている。
「ホントだ。」
確かに周りにおだてられて飲んでいる感じ。
「あーあ、知らないよ。アイツ、そこまで強くないよね?」
「うん。」
『246』で1回だけ泥酔させてしまった…
と言っても私達の普段のペースに一緒になって付いて来たら進藤だけ、へべれけになっていたという過去がある。
私はぼんやり進藤の様子を見ながら、成二の後ろ姿を視界の端に入れていた。
こちらには背を向けているが、隣には玲奈が寄り添って座っている。
さっきまで進藤が近くにいたから、成二の姿が見えていても平気だったのに、今は胸が痛む。
女性に囲まれている進藤も、玲奈が隣にいる成二も見たくない気分だ。
「トイレ!」
私は不躾に今日子に言って席を立った。