冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!

この光景、以前、見た事があるなぁと生ビールを一杯飲み干しながら考える。
ああ、部全体でやった事業部長の送別会か。


企画部の女子がやたら進藤にくっついてたなぁ。
と、企画部の女子たちに目をやったら、進藤の方をチラチラと見ていた。
そっか、進藤がメガネを取るとイケメンって…知ってたのか、あの子たち。


メガネをかけてても進藤は進藤なのに…
私はこの感情が何なのかわからないのまま、2杯目の生ビールを勢い良く呑んだ。



「夏希、ペースが早くないか?!」

えっ?成二?
いつの間にか、成二が心配そうに私の隣に来て顔を覗き込んでいた。



「そうかな?暑かったから喉が渇いちゃって。成二もお疲れさま。」

成二がふんわりと微笑んだ。
この笑顔が私は好きだった。
ふと感傷的になりそうだったから自分から話をふった。



「礼奈は?あっ、妊婦さんだから来れないか…」



「ああ」

急に成二の声が不機嫌になった。
玲奈のことを話題にして欲しくなかったのかな。
私は「そっか」と意識して明るく答えた。


「フッ…、なんか前の夏希に戻ったな。」

ああ、懐かしい成二の笑顔。
ホントだ、私、成二と普通に話せてる。
礼奈が妊婦だという事を認識するのは傷つくかと思っていたのに、なんだか平気な自分がいる。

私が生ビールを2杯飲み干すと店員を呼んで追加を頼む。
成二も「ウーロン茶二つ」と付け足していた。


オーダーしたビールが前に置かれて、またグビッと呑もうとした時、成二がグラスを奪い取った。


「まずはウーロン茶を飲め。
そこまで強くないんだから、ノンアルコールと一緒に飲んだ方が良いって前から言ってるだろ?」

私はキョトンとし、成二を見ていた。


「なんだよ。」


「ううん。いつもこんな風に怒られてたなって。」

と、私は言われた通りにウーロン茶に口を付ける。



「酔うと…危なっかしいんだよ。お前は。」

そう言いながら、成二の視線は私の目の奥をじっとみつめていた。
えっ?なに?そう思った時、



「はい!そこまで!」

と、今日子が割って入って来た。






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