冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
「進藤が怖い顔して見てるし。」
私の耳元でつぶやく。
ハッと進藤の方を見ると、ひどく恐ろしい顔でこっちを見ている。
両サイドにいる女子たちがワイワイと進藤に話しかけてるのに。
進藤と視線が外れたのは、酔っぱらった大木さんが私の肩にゴンとぶつかってきて持っていたウーロン茶がこぼれた時だった。
「あー、悪い、悪い!」
とニヤニヤしながら大木さんがおしぼりで私の太ももを拭き出した。
「も!どこ触ってるんですか?」
大木さんがやるから全然エッチじゃないんだけど…
「自分でやりますから!」
と、太ももにこぼれたウーロン茶を拭いていると、成二に向けられている今日子の声がふと耳に入って来た。
私がこっちに気を取られてると思って話しているんだろう。
「成二、あんたってホントにバカだね。
あれだけ夏希を傷つけたんだから、もうあんたの気持ちは表に出しちゃダメって言ったでしょ?」
えっ?今日子、今、なにを言ってるの?
「わかってる。」
「わかってないよ。
礼奈の妊娠だって、計算高い礼奈の仕業でしょ?
まんまと引っかかって。自業自得だよ。」
「わかってるって!!!」
成二が今日子に向かって少し大きな声を張り上げて、振り返った私と目が合う。
私は酔いが一気に冷めてしまった。
「どう言う…こと?」
今日子が私の知らない何かを知っている。
「夏希、ちゃんと話がしたい。」
成二が強い口調で話して来る。
「成二!!」
今日子が咄嗟に声を荒げて止めた。
私はその逆に冷静な顔で答えた。
「わかった。
だって今日子は何か知ってるんでしょ?なら私も知りたい。」
「夏希…」
今日子が困った顔をする。
「大丈夫、今日子が心配するほど私は弱くないよ。」
心は立ち直って来ている。
「私も一緒に行くよ。」
今日子がいつになく心配そうな顔をする。
「二人で話したい。」
成二がキッパリと言い放つ。
こう言う時の成二は一歩も譲らないだろう。
「大丈夫だってば。」
そう言って、私は今日子の肩を叩いた。
他の皆はお酒が入っているせいか、私たちのやりとりなんて、
まるで気にしてない様子だ。
成二が先に店を出て行った。
私はトイレに行くフリをして成二の後を追った。