冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


「もしもし」

その声は不機嫌な平岡さんの声だ。



「なにするの?!!!!」

後ろで微かに聞こえる夏希さんの声。
やっぱり一緒にいるんだ。



「進藤?」

平岡さんが感情のない声で僕を呼ぶ。
僕は嫉妬で胸の奥に黒いとぐろを巻く影を感じる。
なんで夏希さんの電話に平岡さんが出るんだ。




「夏希さん・・・は?」

と、僕は訊ねる。



「夏希なら一緒にいるよ。」

そんな事はわかってる。
どうして夏希さんの電話にアンタが出るんだ。
夏希さんがどうして電話に出ないんだよ。
もしかして・・・
二人はそう言う関係になってしまったんじゃないかとネガティブな思考へ進んでしまう。



「どうして?夏希さんは?」

僕の焦りを面白がってるのか、平岡さんの言葉は僕から冷静さを失わさせた。



「夏希と今、大事な話をしてるからさ、急用じゃ無ければ後でいいかな?」

なんなんだ、この人は。
口調は穏やかだけど、凄みを効かせてる。



僕が無言のままでいると、受話器から人が動く音がしていきなり夏希さんの「キャッ!」と言う小さな悲鳴が聞こえてきた。



「夏希さん?どうしたんですか?今、どこなんですか?」

僕は平岡さんが答えないとわかっていても、すぐにでも駆けつけたくて場所を聞いてしまう。



「進藤・・・
大丈夫だから。
心配しなくて大丈夫だから。」

夏希さん?



「僕、迎えに行きます。どこですか?どこにいるんですか?」

冷静さを失ってるのはわかってる。
とにかく居場所を聞き出したかった。



「大丈夫だから・・・後でれんら・・く・・」

ツーツーツー。電話が切れてしまった。



「もしもし?もしもし?夏希さん?!」

大丈夫ってなんだよ。
大丈夫の意味がわからない。
僕は無我夢中で夏希さんのスマホに掛け直す。
しかし、すでに電源が切れているというアナウンスになっていた。








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