冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


明け方、進藤と愛し合ってから、またウトウトしてしまった。
次に目が覚めた時は、とっくに陽が昇っていて、進藤はベッドからいなくなっていた。
私が動いた音が聞こえたのか、進藤が寝室のドアから顔をのぞかせた。


「おはようございます。」

進藤はゆうべ来たときと同じ洋服に着替えていて、身支度を整えていた。
私はまだ下着のままだったので、急に恥ずかしくなる。
ベッドの上で進藤をみつめていると、進藤がベッドの縁に腰掛けた。


チュッと軽いキスをすると残念そうに頭を掻く。

「今日も仕事なんです。隆之介さんとこの…」



「そうなんだ。」

私はがっかりした事を胸に秘めて、淡々と答える。



「あ〜あ、夏希さんとずっと一緒にいたいのに。チッ!」

舌打ちをする進藤なんて初めて見た。
私はなんだかおかしくなってつい笑ってしまう。


「ん?」

と不思議そうに顔を傾ける進藤に



「なんか、かわいいなと思って」

と付け足すと今度は拗ねたような顔になり



「子供扱いしてませんか?」

と、更に拗ねてしまう。



「子供があんなことするわけないじゃん。」

と言った途端、私は墓穴を掘ったと急に恥ずかしくなった。
案の定、進藤は拗ねた顔から、パッと表情を明るく変え、



「あんな事って、どんなことですか?」

と意地悪な顔になった。
知らないと言って私が布団をかぶろうとしたら、



「ダメ。ちゃんとこっち向いて下さい。」

と、私を自分の方に向けた。



「僕、今日は6時には仕事を終わらせます。
もし夏希さんの予定が空いてるなら、僕の家に来ませんか?
逢えるのは仕事が終わってからになっちゃうけど、僕の家で待ってて貰っても構わないので。」


なんだろう、普段には見せない少し強引な感じ。
でも、それに心地よさを感じている自分もいる。



「ダメですか?」

私が答えにためらってると思ったのか、進藤が少し弱気になる。



「ううん、大丈夫。
でも明日は会社だから、遅くまではいられないけど。」



「明日の会社の用意もして、僕の家に来て下さい。
パジャマとかいらないけど・・・」

と意味深に笑う進藤の顔がイタズラをしている子供のように、目がキラキラとしている。
こんな台詞を言う進藤もどうしようもなく魅力的に見えるから困ったものだ。



「わかった。」

とだけ答えると、進藤のスマホが鳴った。
進藤が電話にでると「今から向かいます。」とだけ言って切った。



「お義兄さん?」



「姉貴です。はぁ・・・早く来いだって。」



「うんうん、もう行った方がいいよ。」



「離れたくないなぁ。やっと捕まえたのに。」



「やっと?」



「いや、こっちのことです。
じゃ、夏希さん、これ渡しておきますから、着いたら部屋で待ってて下さい。」

と、進藤の部屋の鍵を渡された。



「これ渡したら、進藤が入れないじゃん。」



「姉貴が持ってるから大丈夫です。
でも、そろそろ取り上げよう。あの人、神出鬼没だからな。」



「お姉さん、進藤が心配なんじゃない?」



「でも、
こういう事をしてるときに入って来られたら困るでしょ?」
と、また私の唇を深く奪った。
それが永遠に続くんじゃないかと勘違いするほどの長いキス。
でもそれを止めたのも進藤だった。


「はぁ、時間切れ。
夏希さん、また夕方・・・待ってますから。」

そう言って慌ただしく進藤は帰って行った。





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