冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


「僕は、同情なんかじゃなく、本気で夏希さんが好きになったんです。
 
企画部では平岡さんと同じプロジェクトチームに配属されました。
平岡さんは仕事もできて、人柄もよくて、見た目もかっこいい。
男としても憧れで、彼のようになりたいとも思っていました。

平岡さんも僕のことを可愛がってくれていて、2人で良く飲んで帰ってました。
その時の話題は、その日の出来後だったり、仕事の話しだったり・・・


ある日、僕とばかり飲んでいるから彼女に怒られないのか平岡さんに何気なく聞いてみたら、自信満々で『愛してるから大丈夫』とのろけられました。
ことあるごとに彼女のことを自慢する平岡さん。
いつしか見たことのないその彼女の存在が僕の中で膨らんで、とても可愛くてステキな女性を想像するようになりました。

 
意地っ張りなのに泣き虫で、曲がったことが大嫌いですぐ人のために動いてしまう。
好きな音楽が聴こえてくると、その音に浸って声をかけても没頭しちゃう。
しっかりしてるように見えて案外おっちょこちょい。見ていて飽きないんだよね。と何度ものろけられました。

それが羨ましくもあり、憧れでもあった。
まだ顔も知らない平岡さんの彼女を偶然見たこともありました。


最寄りの駅では平岡さんは一人で電車に乗り込みました。
ぎりぎりに乗り込んだ僕が平岡さんの方へ近寄って声をかけようとした時、少し離れて立っていたある女性が、いつの間にか平岡さんと見つめ合う距離まで近づいていたんです。
きっと付き合いを公にしていない、2人の待ち合わせ方だったんでしょうね。
 
愛おしそうに平岡さんを見上げる横顔は、とてもキレイで見惚れてしまうほどでした。
混雑した車内で彼女をさりげなく守る平岡さんもかっこよくてすごくお似合いでした。妬けるほど。

平岡さんと飲むようになってから半年ほどが過ぎたある日、
同じ部の小沢さんから「成二くんとよく飲みに行ってるよね? 私も一緒に行きたいな」って言われました。
最初は軽いのりで、行きましょうと誘いました。
 

それが僕たちが飲むたびに付いてくるようになったんです。
平岡さんは優しいし、何も言わないんですけど、たまには男同士で話したいなと思い始めたころ、小沢さんが僕に言ったんです。

『私、成二くんと付き合いたいから協力してね。』って。
僕は何を言ってるんだと思いました。

『彼女、いますよ。平岡さん。』

『知ってる。設計部の夏希ちゃんでしょ?』
 
その時、僕は初めて平岡さんの彼女の部署と名前を知りました。
それなら、なおさら、付き合いたいってあり得ないでしょ。
と思っていたのに、小沢さんの行動は強引でした。


『私、成二くんと2人きりになりたいから、進藤くん、適当に帰ってね。』
と、飲み会で僕が帰るようにし向けたりしていました。

そのうち『進藤くん、夏希ちゃんを誘惑してくれない?』と言われた時はさすがに意味がわからないと言いました。」


ここまで一気に話すと、大木さんは
「見た目じゃわからないな、あの子。」
と、ぽつりとつぶやいていた。






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