冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
一瞬だけ時間が止まり、その時間を動かしたのは響さんだった。
「夏希さん、こちらは近藤三咲ちゃん。早瀬デザイン事務所のスタッフよ。
亮介と同じ年だっけ?」
えっ?デザイン事務所のスタッフ?そうか、身近にこんな可愛い子がいたんだ。
「三咲ちゃん、買い物終わった?」
響さんが聞く。
「だいたいは・・・
亮介くん、自分から買い物を手伝ってって言ったくせに。」
まだ文句を言い足りないようだった。
「すみません。」
進藤は私を見たまま、言葉だけでその彼女に謝っていた。
「三咲ちゃんは見ての通り、女子力がハンパないの。
可愛いでしょ?男の子にもモテるのよ。
最近、亮介がある女性の気を引きたくて、自分を変えたいけれど、変え方がわからなくてね、
三咲ちゃんに手伝ってもらってるの。
ね、亮介?」
「姉ちゃん!!!!うるさい。」
進藤は照れた顔をして頭をボリボリ掻いていた。
「夏希さん?!
亮介と一緒に歩いてたのって三咲ちゃんじゃない?」
響さんは全部わかってたようにニコニコと問いかけてきた。
私はコクンと頷いた。
三咲さんと言う女性は何がなんだか訳がわからないって顔をしている。
「えっと・・・亮介くんの彼女ですよね?
まだ完成していませんけど、少しはまともになってると思うので・・・」
と、進藤を指さしていた。
完成してない?少しはまともになってる?
その言葉を理解した時には、もうここから立ち去りたいと言う雰囲気を出している三咲さん。
「亮介くん、私、彼との約束があるから。もう帰っていいでしょ?」
「あっ、ありがとうございました。」
「響さん、また月曜日。」
と言って、私にもちょこんと頭を下げて三咲さんは足早にカフェを出て行った。
「私もお迎えが来たから帰ろうっと。」
と、カフェの外を見ると、早瀬さんが停まった車から手を挙げていた。
「亮介、夏希さんをちゃんと安心させてあげなさい。
夏希さん、亮介からイヤなことされたらすぐに連絡してね。」
と、ウィンクをして伝票を片手にカフェを出て行った。
進藤は何も言わず、私の手を取り、カフェから私を連れだした。