冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
無言のまま、進藤に手を引かれ歩き続ける。
今までどちらかというと私の方が不機嫌という立場だったのに、今は逆転して進藤が不機嫌な顔をしている。
「進藤?」
私が声をかけても、一向に歩みを止めず話しもしない。
ただ手を引っ張られている。
しばらくすると見覚えのあるマンションにたどり着く。
進藤の自宅だ。
無言のままエレベーターに乗ると、手をギュッと強く握って来た。
5階に着き、部屋のドアの前に立つと、ちょっと乱暴に鍵を開けた。
部屋に入ると進藤は私の手を離してスタスタと部屋の中へ入って行ってしまった。
「進藤・・・。」
私は少し戸惑いながら玄関に立ち尽くしてしまう。
「はぁ。」
ドサッと座った進藤からため息が聞こえる。
と同時にソファをとんとんと叩いて私を呼ぶ。
「夏希さん、ココ…。 来て下さい。」
少し不機嫌なのがわかる。
私は言われたままに、部屋に上がり、進藤が座るソファまでいそいそと歩いて行った。
「座って。」
そう言う進藤は、ローテーブルにメガネを置いた。
私は遠慮がちに少し進藤と距離を置いて隣に座る。
すると進藤がふっと笑い、いきなり手を伸ばし、私の頬を撫でて来た。
こう言う展開になるとは想像していなかった私は少し驚いて動けないでいても進藤の手は頬から耳たぶに移る。
急に恥ずかしくなって、私が俯こうとした時、耳たぶにあった進藤の手が顎に移動し、クイっと顎を上げられてしまった。
進藤と視線が絡み合う。
ゆっくり進藤の唇が近づいて来て、私の唇に重なった。
長い長いキス。
進藤の手は顎から私の頭の後ろにいつの間にか移っていて、私は進藤からもう逃げられない。
舌を絡め合い、息すら付けないほどの激しさに、艶かしい声を漏らしてしまう。
「ん…ふ…」
自分のその声にハッとし、進藤からは離れようとしたけれど、進藤は離してくれない。
「もう少しこのままで。
今までどれだけ我慢してたと思ってるんですか?」
進藤は頭に回した手をゆるめようとはしない。
やっぱり立場が逆転している。
どう見ても私の立場の方が不利になってる。
「はぁ・・・」
しばらくするともう一度進藤は小さくため息をついて私の頭から手をそっと離した。