冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
「夏希さん?」
急に涙がこぼれた。
「どうしたんですか?
俺、また何か気に障ること言っちゃいました?」
余裕で話をしていた進藤の顔に焦りが見える。
「ううん・・・
進藤が会社を辞めるなんて思ってもみなかったから。ビックリしてる。」
焦っていた顔の進藤がフッと笑ってる。
進藤の大きな手のひらが私の頭をぽんぽんと軽く叩く。
やめてよ、キュンってしちゃうじゃん。
「進藤だけ余裕みたいでムカつく。」
「はい?」
「私だけ取り残されて、進藤だけ違う世界に行っちゃうのがムカつく。」
「意味がわからないんですけど。
というか夏希さんだけ取り残されるって。
会社で逢わなくても、こうして逢えますよね?
付き合ってるんだから。」
「えっ?私達、付き合ってるの?」
「・・・・。」
進藤がため息すら付く様子もなく絶句している。
「夏希さん、どの口がそう言うことを言うんですか?」
そう言いながら、私の唇を指でつまみ上げる進藤。
意地悪な目をしている。
「痛い・・・」
という声にならない声で抵抗したけど進藤の指が唇から離れない。
指が離された時には、そっと親指で私の唇をなぞっていた。
動けないまま、進藤の指の感触だけに集中してしまう。
ぞくっとした途端、唇を奪われた。
ここ数日のあやふやだった関係を埋め尽くすように強く激しく唇を啄んでくる。
「しん・・・どう・・」
吐息混じりの私の声を合図に進藤の舌が私の舌に絡められる。
長い長いキスだった。
「こんな事してるのに付き合ってるのかなんて聞いて。
まったくこの人は・・・。」
そう呟きながら、惜しむように私の唇から離れた進藤は、そのまままた首筋に舌を這わした。
「ん・・・。」
抑えようとしても声が漏れてしまう。
耳たぶを甘噛みしながら進藤が唇を動かす。
「もう、離さないから。」
耳にかかった吐息と甘い言葉に幸せで気が遠くなりそう。
「返事は?」
と聞かれて「うん」とだけ頷いた私を進藤はそのままベッドまで連れて行った。
甘く激しく何度も何度も求め合った夜だった。