冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
付き合ってから初めての『246』
金曜日。
久しぶりに3人で「246」にいた。
進藤と付き合ってから「246」に来たのは初めてだ。
マスターが淋しかったとしきりに言っていた。
3人で並んでカウンターで飲んでるといつものようにマスターが話しに入ってくる。
私と進藤が付き合いだしたことを言おうか、言うまいか迷っていたら、今日子が面白がって口を開いた。
「マスター、聞いてよ。この2人、できちゃったんだよ。」
マスターは一瞬驚いていたけれど、すぐに穏和な笑い顔になる。
「そっか、そっか。良かったな、進藤くん。」
なぜか進藤に満面の笑みを向けた。
「はい。」
進藤は躊躇わずに返事をする。
「えっ? マスター知ってたの?」
と、今日子が聞くと
「ハッキリとは聞いてないよ。
でも平岡くんとも良く飲みに来てたし、途中から女の子も来てさ、なんて言ったかな?
なんかこう・・・裏表がありそうな子。」
そのうち、進藤くんも仲間外れになっちゃって。
なんかこう・・・変な感じになっちゃったなと思ってたんだよ。」
進藤が成二と飲んでいたのは「246」だったのか。
そして玲奈ともここで。
私が少しうつむくと、進藤がそっと私の太股に手を乗せた。
それでもマスターは話をやめない。
「でもさ、
進藤くんと次に逢ったらこの2人と一緒だっただろ?
なんか嬉しくてさ。
色々あっても、一緒に来る人は違っても、ココに戻って来てくれると思ったら嬉しくてね。
特に君たちは僕のお気に入りだから。ここだけの話。」
マスターは何を気に入ってくれているのかわからないけど、確かに他のお客さんよりひいきしてくれている気がする。
「それに進藤くんが夏希ちゃんをすごく好きなこともわかってたよ。
だてに30年もこの店をやってないでしょ?
人の心が少し見えるっていうかさ。
だから僕は2人が付き合うって聞いてすごく嬉しいよ。」
と鼻をふふんと鳴らす。
小声で今日子が「進藤の夏希好き好きオーラは誰でもわかるよ。」
と言っていたのはマスターに聞こえなかったんだろうな。