登山ガール
由美ちゃんがいて本当に良かったよ。
私と先輩じゃ、下手したら登山道にさえつかなかったかも。





「わぁ。先輩、由美ちゃん、滝だよ滝。辺りも木々が増えてきたし、なんか山って感じ。」

「いや、山だよ。もしここが海に見えたなら病院を紹介するよ。」

由美ちゃんが私を軽くあしらう。

ふん。この感動は来たことのある人じゃ分からないよね。と、言うことで、

「先輩、山ですよ山。なんかテンション上がりますよね。」

「は?そう?って言うか暑い。なんで山になんか登ろうとしたんだろあたし。」

何言ってんだろ、この先輩。自分で誘っておいてもうやる気なくしてるし。

「桜井先輩、まだ登山道にも着いてないですよ。と言うより、体力無さすぎです。」

「あんたらより歳を喰ってるのよ。少しは先輩を敬いなさい。」

歳なんて私達より2つ上なだけなのに。先輩は先輩だけど。

「ほら、ここで山の水が飲めますよ。湧き水かは分かりませんが、コップが置いてあるから飲めるはずです。毎回、わたしは飲んでますがw」

「ホントだ。私も飲んでみようっと。」

備え付けのコップを濯ぎ、流れている水を注ぎ少し口に含む。

「おいしい。なんだろ、なんかおいしい。先輩も飲んでみましょうよ。」

先輩が息を切らしながら、水を含む。

「う~ん、普通の水ね。コーラとかビールとかなら嬉しいのに。」

「はぁ。」

由美ちゃんが盛大にため息をついた。

「花菜ちゃんは登山に向いてるかもね。もう少し行けば登山道だから。無理せず、急がす、山頂を目指そう。」

「うん。ほら、行きますよ先輩。私を誘ったのは先輩なんですからね。」

私は先輩の腕を取り、立ち上がらせる。

「うぅ。花菜がこんなに体力がある子だとは思わなかった。」

「「(桜井)先輩がなさすぎるんです。」」

2人して先輩に突っ込みを入れたのだった。







「はい、この地蔵から登山道になります。ここからが山です。足元も舗装されてないから怪我をしないようにね。」

先輩が追いつくのを待つ間、いろいろと話をしてくれている。

「この滝子山は、笹子駅から初狩駅に向かうルートがわたし的に好きなの。緑に囲まれながら沢の上流を目指す。案外、疲れずに山頂付近まで行けるよ。山は基本、登りより下りの方が辛いから、なるべく体力と水分は温存しておいてね。」
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