きっかけは誕生日
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目覚めると朝だった。
それはいいのよ。夜中に目覚めるよりはずっといい。
いつも通り洗面所で歯磨きと洗顔を終わらせて、シャワーを浴びて汗を流す。
髪をドライヤーで乾かしながら、窓から見えるいいお天気に目を細めた。
今日は誕生日。私の30回目の誕生日。
誕生日くらい特別でもいいと思って20年。
それでも10歳くらいまでは、母さんが誕生日会を開いてくれていた。
開いてくれたけれど、どうやら自分の娘にはあまり仲の良い友達がいないらしい……そう気づいてからは、内輪で、家族だけで祝うようになった。
……もう、お祝いはいいな。
鏡を見ながらつくづく思う。
どこにでもある平凡な顔。
基礎化粧品は必要最低限。化粧水と乳液と化粧下地の三種類。
ファンデーションはコンビニの一番安いやつ。
リップは色が微かにつく程度の薬用リップ。
眉は多少整えているけれど、そのまんま。
美女だったら、多少は人生違ったかしら。
頭を振りながら、部屋に戻って仕事に行く用意をする。
どちらにしろ、平凡な家庭の平凡な両親から生まれた娘が、いきなり美女になったら怖いと思う。
誰の子供だって事になってしまう。
余計な家庭崩壊の火種になるなら、平凡に生まれてきて良かったと思うよ。
いや、それは本当。
そりゃ、巷に蔓延している恋愛小説の様なシンデレラストーリーに憧れがない訳じゃない。
でも、いつか誰かが……なんて、夢のような出来事が無いことは知っている。
だから、高望みしている訳じゃない。
ないけれど……
鏡に映った自分の姿に愕然とした。
図書館司書という仕事柄、落ち着いた色合いのタイトスカートは、動きやすさ重視だから少し野暮ったいくらいにゆるゆる。
気がつけば伸びていた髪は、単にひとくくりで三つ編み。
決まって装飾品は落とすから着けない。着けるのは腕時計のみ。
流行り廃りがないからと、買った白いブラウスは、高校時代の制服シャツによく似ていた。
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