きっかけは誕生日
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「小柳さん。どこに行くの」

 返却がバタバタ続いて、少し遅れて入ったお昼休み。
 カフェを通りすぎようとしたら、金井さんが出てきた。

「…………」

 ……どうしてこの人は、今、このタイミングで出てきた。

「お昼休みでしょう? 食べていかないの?」

 今日は、カフェでランチはしないと心に決めたのです。

 そんな事を、カフェの店員さんに言うほど馬鹿じゃない。馬鹿じゃ無いけれど、さて……

 金井さんは立ち止まって固まった私を眺め、それからニヤリと笑った。

「せっかくケーキ用意したから、食べていきなよ。チョコレート系は好きでしょう?」

 チョコレートには目がないわ。

 中学の頃には、ニキビが出来て困ったけれど、それも大人になるにつれて気を付けるようにしてから治った。

 恐るべきは、ママのアロエの化粧水。

「まぁ。黙ってるなら連れ込もう」

「は……?」

 言った瞬間に手を捕まれて、カランコロンとドアベルを鳴らしながら、カフェ店内に連れ込まれた。

「主役到着」

 金井さんが言うと、カウンターからひょっこり顔を出したのは咲良ちゃん。

「え。あれ? 咲良ちゃん?」

「もう! 先輩って水くさい! 誕生日なら誕生日って言ってくださいよ!」

「や。この歳になってまで誕生日言いふらすのはどうかと思う」

「何を言っているんですか。ハッピーバースディですよ、めでたいに決まっているじゃないですか」

 状況が飲み込めない。

 どうして咲良ちゃんはここにいるんだろう?

 しかも、どうしてカウンターの中にいるんだろう?

 そして私は何故、金井さんに連れ込まれたのだろう?

「……暇そうね」

「うちは常連さんで持っているような店なんで。13時過ぎればこんなものだよ」

 そうなんだ。いつもは遅くても12時半にお昼休みだから、あまり気にしていなかった。

 空いていると静かになるから、読書がとてもはかどる……

 では、無くて。

「どうして咲良ちゃんがカウンターにいるの?」

「久しぶりにランチ食べに来たら、俊兄が先輩の誕生日だからって言うから」

 や。説明に全くなっていないけれど、そこは気づいている?
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