幼なじみが私の彼氏になりました
「その人は?」
佐々木君はその子を見て言う。
「えっと、サッカー部のマネージャーさんみたいで…」
そう私が答えたらその子はこう言った。
「なんだぁ。空先輩の他にいたんですね。それなのに空先輩に近づいて、あなたは最低です」
「…」
何も言えなかった私の前に
「最低なのは君じゃない?」
と、佐々木君は言った。
「なんですかあなた」
「君は、空に関わる人にこんな手のこんだ事ばっかりしてるんだろ、自分が近づきたくて」
「…あなたには関係ないでしょ」
「そうかもだけど雨宮さんは脅さないでね」
そう言って私の手を引っ張る佐々木君。
「あの、佐々木君…」
何も言わない佐々木君は黙々と私の前を歩く。
「ありがとう…」
「…遅いと思ったんだよ」
花火大会がある公園についた。
うわー、人がいっぱい。
「佐々木君、あの…」
「何?」
「手…」
「…あぁ」
佐々木君は手を離す。
段々と辺りが暗くなってきた。
「迷うなよ?」
「えっ、うん…」
私は必死に佐々木君に着いていく。
「ちょっ、やっぱりはぐれそう」
「えっ?」
そう言って私の手を握った佐々木君。
「…」
佐々木君の手がおかしかった…。
なんだか、行かないでって言っているみたいに力が強くて、だけど寂しそうだった。
もしも、空と一緒に行けたらなって、
空と手を繋げていたら…。
私何考えてんだろ。
…空…。
『行くなよ』
『え…?』
『花火大会…』
…っ。
「さっきの女の子から何もされなかった?」
「あ、うん…」
「そっか、良かった…」
「佐々木君…あのね…」
すると佐々木君はその場で止まった。
たくさんの人がわたし達を抜かしていく。
「行くんだろ?アイツのとこ」
「…」
「アイツさ、良かったよ」
「え?」
「1回、1年のクラスマッチでアイツとサッカー当たったんだけど、すごかった」
「…」
「って、それだけしか関わりないんだけどさ。でも、アイツになら安心出来るって言うか、そんな男だった。表では強がってるかっこ付だけど、本当は寂しがりや。なんかさ、」
「ぅん…」
「俺と似てるんだ…」
「…佐々木君…」
「だから今でも寂しがってんじゃないの?」
「…」
「だから、行ってあげてな」
そう言って佐々木君は群れの中に消えていった…。