君の花嫁~大学生編~


「何ですか?」


呼ばれたからには振り向いて聞き返す。しかし、この表情には覚えがあった。


「あの、今ちょっといいかな」


頷くと、男性は自分の名前とクラスが一緒だということを告げる。
背は高いが細身でなんだか折れてしまいそうな体格だ。服装はいかにも大学生と思わせるような、ネルシャツにチノパンだ。
知っていると伝えると、嬉しそうにパッと顔を輝かせた。なんとも笑顔が可愛らしい。しかし。
うーん、これは自分の予想がビンゴかもしてない。
そう思っていると、案の定男性は恥ずかしそうに言った。


「あの、俺一年の頃から雨宮さんのことが気になっていて。よかったら、その……付き合ってもらえないかなって」
「えっと……」


恥ずかしそうに俯きながら告白をしてくる男性に間をあけてから「ごめんなさい」と告げる。
多くはないが、大学に入ってから何度かあった。でもいまだに慣れなくて、返事の仕方に迷ってしまう。
すると、男性は悲しそうな表情で言葉を続けた。


「経営学部に彼氏がいるって本当?」


伊織のことだろう。
高校からの持ち上がり組の人間は、伊織と私の関係を知っている人が多い。
そのことを知らなさそうな彼は外部受験者だ。
まぁ、告白してくる人の大部分が外部受験者なのだが。




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