君の花嫁~大学生編~
しかし、別にここでお見合いは珍しいことではない。
ここ鳳凰大学は小学校からある付属の学園だが、いわゆるお金持ち学校という所だ。
大学は外部から受験して入ってくる人も少なくないが、昔から学園に通っている人は生粋のお嬢様、お坊ちゃまという人がほとんど。
この夏目薫だって、大手宝石商の娘である。
そんなお嬢様やお坊ちゃまに早いうちからお見合いの話が出ることは実はそう珍しいことではなかった。
中には幼いころから婚約者がいる人もまれにいる。
しかし、薫は再び頭を机に乗せるようにうな垂れた。
「わかっているよ。いつかはこんな日が来るってわかってた! でも、でも」
「嫌なものは嫌だよね。好きな人がいれば尚更」
「うう、真琴ぉ」
私が薫の頭をぽんぽんと撫でると薫は悲しげに顔をゆがめた。
いつもさっぱりとした性格の薫がここまで落ち込むのは他ならない、好きな人がいるからだ。
「肇君には言ってないんでしょ?」
「言えるわけないじゃん。付き合ってすらいないのに」
「だよね~……」
薫の片思いの相手は、高校から持ち上がり組で幼いころからの友人である相模肇。
今まで意識したことなかったのに、最近になって急に恋愛対象になったそうだ。