君の花嫁~大学生編~
爽やかな王子様を嫌う伊織のその心情は複雑のようだった。
カインが留学するようになってから、伊織の私への独占欲、束縛が強くなっている気がする。
あからさまではないのだけれど、気がつけば前より……という感じで。
例えば、昨日の夕方、講義のあとに教授に質問していたために帰りが遅くなった。
すると、一度帰ったはずの伊織が迎えに来ていたのだ。
「え? 伊織?」
「待ってた。帰ろう」
「待ってたの? 今日はお義父さんの会社は行かなかったの?」
講義のあとはたいてい義父の会社に研修に行っている。
しかし、夕方のこの時間に大学にわざわざ用もないのに迎えにくるなんて珍しい。
「俺がお前に会いたかったから」
そう言われてドキッとしたが、その目が切なげで不安になる。
どうしてそんな目をするのだろう。
まるで、私から離れるのが不安なような苦しいような目をする。