君の花嫁~大学生編~
次の日。
目を覚ますと、隣に伊織の姿はなかった。
慌てて身仕度をすませ伊織を捜す。
昨日の今日で顔を合わせたくないのかもしれないが、あんな不安定そうな伊織をひとりにしたくない。
バタバタとリビングへ向かうと、コーヒーを片手に新聞を読む伊織が「おはよう」と振り替えって微笑んだ。
「おは……よう」
そのいつも通りに少し戸惑う。
「なに突っ立ってんの? 座りなよ。あ、カイン。そこにいるならついでに真琴のコーヒーも入れてください」
伊織は自分の隣の椅子を引きながら、キッチンにいるカインに声をかけた。
「王子を使うようになったね」
「立っているものは親でも王子でも使えってね」
カインの苦笑に穏やかに返す伊織を見て、体が動かなくなった。