君の花嫁~大学生編~


チラッと隣の伊織を見上げると、視線に気が付いた伊織が微笑みかける。
詳しい事情は分からないだろうが、様子から何かを察したようだ。
そして私の腕をつかんで立ち上がらせた。


「俺たちこれから用があるから。肇、夏目のこと頼んだ」


伊織がそういうと、肇は軽く手を上げて応える。私と目が合うと肇は笑顔で頷きながらひらひらと手を振っていた。
任せて大丈夫と言うことだろう。
「お願いね」と口パクで伝え、伊織の後を追った。


「伊織。ありがとう」
「ん? ああ、まぁあの二人なら大丈夫だろう」


私が隣に並ぶと伊織も歩調を合わせてくれる。そして腕を掴んでいた手がそのまま下へ降り、私の手に絡んだ。
大きな手。でも一番安心する手に頬が緩む。


「どこいくの?」
「真琴も午後授業なかっただろう? だからデートしに行こうかなって」
「行く! 行きたい!」
「じゃぁ決まり」


喜ぶ私に伊織は嬉しそうに笑った。
最近、伊織が忙しそうにしていたからデートはお預けだった。
だから嬉しくて伊織にくっつくように身体を寄せた。


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