君の花嫁~大学生編~
信じて
会場を出され、俯いたままホテルのキーを握る伊織は一言も発しない。
その手を覗くと、カードキーには部屋番号が書いてあった。
番号から予測するに、これはスィートルームではないか?
うわ、と思うが、せっかくだしとでもこれはこれで有り難く受け取ろう。
そっとキーを受け取り、伊織の手を取って歩き出す。
伊織は抵抗もせず、ゆっくりとついてきた。
力のない伊織の手が冷たくて、こっちまで辛い気持ちが伝わってくる。
無言のままエレベーターを降り、部屋に到着すると案の定そこはスィートルームだった。
広々とした部屋に、窓からは絶景の夜景。
しかし、伊織はそんなものに目もくれず、力なくベッドの端に座り込んだ。