俺様主人の拾われペット
「あ、そうだ!
仁美さん、今日花火上がるみたいですよ!」
残ったカステラを食べながら道を歩いていると
千夏が思い出した様子で俺にそう言ってくる。
「さっきトイレで他の人がその話をしてて、聞こえたんです。」
多分もうそろそろ始まるみたいですよ?
と俺に言う千夏が
何と無く目をキラキラさせた気がして
俺は少し考えてから
千夏に告げる。
「…なら、こっちに行くか。」
「へ?」
俺はそう言って千夏の手を掴んで
道を外れるように進んでいく。
すると思ったとおり
数人の人しかいないような
穴場スポットに辿り着いた。
(何と無くうろ覚えで来て見たが…正解だったな。)
下を見れば
すでに花火を見る準備をしているらしい
大勢の人が集まって、場所をとっていた。
多分ここからなら十分見えるはずだ。
「あの、ここって…。」
「穴場だな。人が多くなくて良い。」
お前も迷子にならずに済むしな、と笑ってからかえば
もう!と恥ずかしそうに千夏が俺を軽く叩く。
そしてそっぽを向くと
不意に千夏が声を上げた。
「…あれ…?あそこにいるのって…。」
そう言うので
俺も同じ方向を見れば
(…あ……。)
たまたまだが
あの小僧が随分先の方にいた。
俺たちには気づいてないらしい。
「挨拶…した方がいいですかね?」
と
何と無く行きそうな気配を出す千夏。
(っ、待て…!)
------バッ…!
俺は後ろから
思わず反射的に
千夏の腰に手を回して
自分の方へ引き寄せる。
「っ…?!ひ、仁美さ…?!」
と
いきなりのことに戸惑っている千夏に
俺が耳元で小さく囁く。