俺様主人の拾われペット
この男が入ってきたのと一緒に
俺の秘書も入ってきて
俺とこの男の2人分のお茶を入れると
すぐに部屋を出て行く。
2人きりになると
途端に空気が重くなった。
「…初めまして。
FKプロダクション代表取締役の
若木辰臣と申します。」
「初めまして。
大宮グループ取締役の大宮仁美です。」
静かに名刺を交換して
ソファにこの若木という男を座らせ
俺も向かいのソファに腰をかけた。
静かに
男が口を開く。
「突然訪ねてしまって申し訳ありません。
ですが…私も急用でして。」
そう言った男は
口元は笑みを浮かべているのに
俺を見る目はどこか---鋭い。
(-------何だ こいつ。)
俺の中の嫌な予感が膨らむ。
黙って俺は視線を返して
無言で 何でしょうか と尋ね返す。
「……早川千夏。」
「!!」
「…ご存知、ですよね?」
この男の口から出た
あいつの名前に
俺は目を見開いた。
男は俺のその反応に動じることなく
変わらず怪しい笑みを浮かべていた。
(どうして…あいつの名前を-----!)
俺は動揺する心の中を落ち着かせて
小さく息を吸ってから
静かに口を開く。
「…それが、何か。」
「彼女の件で今日はここに来ました。
-----彼女を返してください。」
「…!!」
-----返す…?
この男の言った言葉が
頭の中でループする。
そして俺は
この嫌な予感と
見覚えのある理由が分かってしまった。
(----------っ、こいつ…!!)
俺が千夏を正式に引き取った日
あの施設で すれ違った男だ。