俺様主人の拾われペット




お金持ちというのは家に何でも作ってしまおうと考えるものなのか。

お風呂なんて1種類でいいじゃないですか。

男女共同でもいいじゃないですか。

いやまぁ1歩譲って男女別で作ったとして
洋風と和風を分ける意味とは?!

ここ宿じゃないですよね?
旅館じゃないですよね?!





「はぁ……。」





いちいち世の中とかけ離れすぎて
頭が落ち着かない。

驚きたくないのに
ありえないものがこの家にはありすぎる。

いろいろ完備しすぎなんですよ!!





(……見なかったことにして早く着替えよう…。)





お風呂に入って癒されるつもりが
なぜか入る前よりドッと疲れが増した気がする。

服を着て、頭を水がたれないように拭いて脱衣所を出る。





「ふぅ……ってうわぁ!!?」

「っ…うるせぇな、声がでかい。」

「な、何で仁美さんが?!」





脱衣所を出るなりすぐそこに仁美さん。

まさか…私が出るまでここで待ってました…?



いや、でもどうして?
何かまだ用事でもあるのかな。





「お前そのままで寝るつもりかよ?」

「え…そのままって?」

「だーかーら、その濡れた髪で寝るつもりかって聞いてんだよ!」




あぁ髪の毛のことか…





「大丈夫ですよ。私いつもこんな感じで自然乾燥ですから。」

「…は……?」






仁美さんがまたしても目が点になっている。

あれ、私今変なこと言ったかな?





「…し、施設にドライヤーというものは…?」

「ありませんでした。ずっと前に壊れちゃって。」

「……し、信じられない…。」





可哀想な目で見られ
わなわなと震えている仁美さん。

まぁ確かにドライヤーはあったほうが便利だったけど
別に無くても生きていけ---





「お前どんだけ悲惨な生活してたんだ!!やばいぞ!!やばすぎるぞそれ!!」

「え、だから何がやば---」

「花崎!!花崎はいないのか!!
早く千夏の髪を乾かしてやれ!!」

「いやそんな大声で叫ばなくても---」

「かしこまりました。では千夏様こちらへ…。」

「え、あの、え?!ちょ、待って…!」












「………。」



ブォォォォ…というドライヤーの音が部屋に鳴り響く。

花崎さんという先ほどの使用人のお兄さんに連れて来られた部屋で
後から来た女の使用人さん達に囲まれ

この有様。

3人がかりで私の髪の毛を丁寧に乾かしていく。

別に3人も必要あります?
美容院でさえ1人か多くて2人ですよ?




(それにさっき自分だって生乾きだったくせに…。)





いちいち全てが大袈裟なのよ。

別に髪の毛乾かなくても風邪引いたことなんてないし大丈夫なのに…。






「はい、乾きましたよ千夏様。」

「え、あ、はい…ありがとうございます…。」





…あれ?というか何であの人
わたしの名前知って…?



疑問に思うものの
本人に聞くしかないと思い

メイドさんからそう言われて椅子から立ち上がり
部屋を出る。

……あれ、ここどこ。

あれ?私確かこっちから来たような…
あれ何か違う気がする。
さっきはこんな道通らなかったと思うんだけど…



「………。」





も、もしかして

迷子…ってやつですかね。





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