俺様主人の拾われペット





学校が終わってから
私はいつものように 仁美さんの迎えを待つ。





(……何でだろう。)






不安な気持ちが---消えない。





ただあの夢を見ただけなのに

嫌な予感は消えることなく
心にモヤモヤと残り続けていた。







(大丈夫…私には、仁美さんがいる。)







---ついてこの間
やっと気持ちが繋がって


幸せだった。




…仁美さんがいる。私には。






…あの日、私を拾ってくれた日から…
仁美さんは、私の味方だった。




彼が…私を守ってくれる。





そう言い聞かせながら
車を待つ。





---すると…









「…あ……。」








黒い車が停車し

私はそこへ近づく。






(よかった、仁美さんすぐに迎えに来てくれた…。)








そう思いながら
ホッとしていると






----ガチャッ







っと 運転席のドアが開いて


中から人が出てくる。








「? 仁美さん、どうかし---」









---どうかしたんですか?







そう 問おうとした言葉が
一瞬で喉の奥に消え去る。














「-------久しぶり、千夏。」












その声を聞いた瞬間

目の前が真っ暗になる感覚がして



思わずその場に
倒れこみそうになる。








(-----どう、して……。)









体が 震えた。



車から降りた彼は
変わらない艶かしい笑みを浮かべながら

こちらに近づいてくる。









------やめて







------来ないで…!!









そう思うのに
怖くて声が出なかった。








「どうして彼の家にいるのか分からないけど……

これからは、もう安心だから。」






そう言って近づいてきた彼に
肩を抱かれて

顔を覗き込まれながら
そう言われる。








-------ゾクッ!








「…さぁ、乗って。」

「-----ぁ、っ-----。」








その言葉がやけに

「早く乗れ。」

と言っているように聞こえて




"助けて"
"やめて"


と出そうとした声が
うまく出ずに 喉で詰まる。








「…千夏。」

「!!」









耳元で呼ばれた名前に
恐怖がブワッと込み上げる。






(---乗らないと、ヤバイ…。)






身の危険を感じて

私はそのまま 助手席にゆっくり座り込む。





そんな様子を見て
満足そうに微笑みながら
扉を閉めて



彼も運転席に乗り込む。






…そして 車は発進した。








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