俺様主人の拾われペット
「すぐ会えると思ってたのに、
何だか少し時間がかかっちゃった。ごめんね。」
「………。」
「施設に迎えに行ったら
千夏いないんだもん。びっくりしたよ。」
「………。」
車に乗るなり走り出すと
どこに行くかも告げないまま
私に話しかける彼。
ヘラヘラと笑いながら
そんなことを言ってくるけれど
私は何も、言わなかった。
-----いや、言えなかった。
恐怖と混乱で
頭がいっぱいいっぱいだったから。
声がでなくて
必死に思考を巡らせていた。
-----どうして私の高校を知っているのか。
施設の院長と仁美さんしか知らない
私の個人情報。
引き取る際に
仁美さんだけが、私のことが書かれた紙を引き継いだはず。
そこにしか
私の高校の名前は書かれていないはずなのに。
-------何故、彼は知ったんだろう?
施設にいる他の子供は皆小さくて
私の高校の名前なんて
言ったところで覚えているはずがない。
(……まさか、調べられた…?)
この人ならやりそうだ、と思いながら
そう考えると同時に
背筋がゾッとした。
…ということは、全て知られている…?
そんなことが頭をよぎって
私は目眩みを起こしそうだった。
「あ、そうだ。
千夏の好きなケーキも買ってきたんだ。
後で一緒に食べよう。」
「………。」
「───ねぇ、千夏。」
(----------っ!!)
───ドキッ!
突然低い声で名前を呼ばれて
私はやっとそこでハッとして
意識を現実に戻した。
…静かに、隣の彼を見る。