俺様主人の拾われペット
「っ、んん…!?」
そう言った瞬間、
仁美に唇を塞がれる。
私は突然のことに驚いて
仁美さんの体を押すも
───ビクともしない。
(…っ…、やば……っ。)
まるで
気持ちをぶつけられているようで
私はギュッと強く──目を瞑る。
「っ……!」
息ができなくて
涙目になるものの
必死に仁美さんを受け入れる。
-----不安にさせてごめんなさい。
-----心配かけてごめんなさい。
-----大好きです。愛してます。
そんな思いを込めながら
必死についていけば
やがて仁美さんが
唇を離す。
「っ………
やっぱり 堪んねぇな…。」
そう言いながら
妖美に笑みを浮かべる仁美さんに
私は思わず胸を鳴らす。
「…これでやっと、落ち着ける。」
「…そうですね。」
そう言いながら
改めて2人で 幸せを実感する。
微笑み合いながら
仁美さんが私の隣に腰掛けて
体を引き寄せる。
「…まだ出会ってそんなに経ってねぇのに、まさかこんな風になるとはな。」
「ふふ、そうですね。
…あ、そういえば」
甘く笑う仁美さんに
私は思い出したことがあって
彼に尋ねる。
「どうしてあの日…
仁美さんは公園にいたんですか?」
「……あー…。」
そういえばそんなこともあったな
というように仁美さんは
あの日のことを思い出しながら
目を細める。
…何でこんなお金持ちのお坊ちゃんなのに
あんな野宿するような真似を…。
「…家の鍵を無くした。」
「…は?」
「飲みに行った帰りに
家の鍵を無くしたんだよ。」
そう言った仁美さんの言葉に
私は思わず目が点になった。
…は?鍵をなくした?
「あんな夜中まで飲んでて、
タクシーで家に帰ったら
鍵がなくて入れなかった。」
「………はい?!」
何を言うかと思えば
そんな理由で
私は思わずそう声を上げた。
鍵なくして締め出されてたの?!
しかもこんなお坊ちゃんなのに
使いの人も寄越さず
あんな夜まで飲みに行ってたなんて…
(……人ってよくわからないなぁ…。)
「まぁでも
行ってみたら案外すぐに花崎に会えて
家入れたんだけどよ。」
だからお前も
割と運が良かったってことだな
そう言いながらケラケラ笑う仁美さん。
…まぁ今となっては
笑い話で済むことか、確かに…。