俺様主人の拾われペット




私の様子に慌てて車に入る仁美さん。

花崎さんも心配してこちらをうかがっている。




(…どうしよう…怖い…っ!)




"あの人"の声が聞こえただけで
こんなにも体が拒絶している。



自分で立とうとしても力が抜けて立てないのだ。






「仁美さん…私、行けません…っ。」





目の前で心配そうに見つめる仁美さんに
私はそう告げた。

ただ駄々をこねているというわけではないのをわかっているためか
仁美さんは私の言葉に
ためらいなく分かった、と言って
待っていろ、と車を1人で降りた。


そして花崎さんに何かあったら呼べ
と告げて1人で中に入って行った。





(……ごめんなさい、仁美さん…。)





"あの人"が、今この施設にいるとは限らないのに
声が聞こえてしまうとどうも恐怖が収まらなくて。


-------でも彼は今日ここに来るはず。


今でなければいいと願うばかりで
私がここにいるのもバレずに
早くここから立ち去りたかった。





「…大丈夫ですか、千夏様…?」

「あ…うん…。大丈夫…。」





花崎さんが心配しながらドアから覗き込む。

返事を返すものの
まだ足の震えは止まらなかった。





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