俺様主人の拾われペット




(…ん?)




私は何かの見間違い、もしくは幻だと思いながらずっとその物体を見る。

その物体は少し動いたかと思うと
小さくうめき声をあげる。





「っぅ…てめぇ…!」

「………え…え…あ、あの…。」





ひ、人の言葉を喋る物体?





「誰が物体だ!俺は人間だ!!」

「ひぃ!!」





なんと。

人が公園の真ん中でも寝ていたらしい。
私はその人のお腹を勢い良く蹴ってしまったらしく。

お腹を手で押さえながらこちらを向く男を見て、思わず体が震えた。



やってしまった。
やばい。



そう思って咄嗟に走って逃げようとした
…が。



-------ガシッ!




「ひっ!」

「この野郎っ…逃がすわけねぇだろうが!」





足をがっしりと掴まれて、思わずまた下を見る。

目が慣れてきてちゃんと見えるようになってくると
相手の容姿がハッキリしてきた。




多分大人の人で
服装はスーツ。

私につかまってる腕を見ると
腕にブレスレットを着用。
指輪もはめている様子。

…まさかヤクザとかじゃ…。

と頭をよぎる。
でもさすがにこの若さはないよなぁ。
と思いながら、足を離してくれない彼を見る。



割と今の私…ピンチだよね。






「は、離してくださいぃぃ!!」

「俺の腹蹴っといて何言ってんだこらぁ!!」





真夜中の公園で大声を上げる私たち。

幸いなことにまだ住民たちは起きていない。
でもこのまま続ければおそらく起きるであろう。




「ごめんなさい!!謝りますから!!」

「良いから1回抵抗やめろ!!」





男の人にそう言われ
渋々抵抗をやめた。

男の人は文句をブツブツ言いながら立ち上がると
私の肩を掴んで自分の方に向き直した。




(え…身長高っ…!!)




こんな人に捕まったら対抗できないよ…!
ど、どどどどうしよう海に沈められるんじゃ…。





「って…お前ガキじゃねぇか!」

「ち、違います。」

「あぁ?ガキだろうが。見ればわかんだよ。」




男の人がそう言って私の顔を覗き込む。

バレちゃった…家に帰されちゃう…。



(どうしよう…。)



絶対に帰りたくない。

帰るわけにはいかないの。
今ここで絶対に捕まっちゃダメ…!!




「………。」





目をギュっと瞑って
拳に力を入れていると

それに気づいたのか、男の人は
私から顔を離してため息を吐いた。




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