俺様主人の拾われペット





---そして次の日。






朝ごはんは仁美さんと向かい合って。



椅子の位置を変えて
仁美さんは納得いかない顔をしながら花崎さんに話しかける。






「何であっちの席に運んでんだよ。」

「千夏様のご用命ですので。」

「この家の主は俺だろうが。」

「ですが千夏様も今はここのご家族ですので。」






とニッコリ花崎さんが告げれば
仁美さんは悔しそうに黙って


不機嫌なまま食事を済ませた。






「千夏!行くぞ!」

「仁美さん、待ってくださいよー!」





仁美さんは部屋を出て玄関へと向かい
私も同じように追いかける。




いつもの様に車に乗れば

仁美さんは私に話しかける。







「そういや、昨日の男の話だが…。」

「あ…はい。」







「そいつには自分には男がいるから無理だと伝えておけ。」

「………へ。」





あれ、案外普通の答え…

と思いパチクリと瞬きをして仁美さんを見れば



何だよその顔は



と眉を下げて私を見る。





「誰だって聞かれたら、俺のことでも言っておけ。」

「え…?!」

「何なら証拠がてらキスしてる写真でも撮っておくか?」





とサラッとそんなこと言ってしまうものだから
私はちょっと待ってください!!と止めに入る。





「何だよ。何か不備でもあんのか?」

「ち、違います!
何で仁美さんを私の彼氏にするんですか!」

「あぁ?主人なんだから当たり前だろ。
それに嘘にそんなこだわる必要ねぇんだよ。存在さえ示たら。」

「で、でも…!」

「ったく…わがままな犬だなぁ。
そんなに俺がお前の男役じゃ嫌なのか?」





と、仁美さんが眉間に皺を寄せながら
いつの間にか吸い始めていた煙草を噛む。

真剣な目で言われるものだから
私も変には返せなくて…





「…い、嫌…ってわけじゃないですけど…。」





と視線を逸らしながら答える。

すると満足したのか
ククッと喉で笑いながら窓を開けて
スーッと白い息を吐く。



(…何しても様になるなぁ…。)



と視線を戻してから思う。

そして仁美さんは外に顔を向けたまま
流し目で私を見て





「…もし万が一、あいつに手でも出された時は…分かってるな?」



----お 仕 置 き だ。



と怪しく口角をあげられ
不意に私はドキッとする。





「…は、い…。」





まただ。

また、あった日の夜と同じ…





断らせない、あの目。






(っ…調子狂うなぁ、この人は本当…。)






と思いながら
熱が集まった顔を隠すように伏せた。





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