俺様主人の拾われペット




試着室へ入れば
そこにあったのは黒ベースの大人っぽい浴衣。

小さくいくつか質の高い花の刺繍の入ったその浴衣に見とれていると

女将さんのような女の人が
私に話しかける。






「これ大宮さんが貴方のために悩んで選んでったものなんですよぉ。」

「え…仁美さんが私に?」

「えぇ、今日はこの近くの神社でお祭りがありますからねぇ。
それで1番綺麗に見せたいっておっしゃってましたよぉ。」





(お祭りって……もしかして、前に言ってた アレ…?)





私は以前
ドライブで海に行った時に仁美さんが言っていた言葉を思い出す。


あの時は私の元気がなかったから
仁美さんが良かれと思って言ってくれた一種の慰めだとばっかり思って…。




それに

今日お祭りに連れて行ってくれるなんて
一言も言ってなかったし

人混みとか嫌いそうなタイプだから
まさかこんなの予想つかないし…





(何より、こんな綺麗な浴衣を選んでくれてたなんて…。)




びっくりしながら
その浴衣を見つめていると
女の人が笑って、私の着替えを進める。





「今日はうんと綺麗に仕上げて差し上げますからねぇ。お祭り楽しんできてください。」




と言われ
ありがとうございますと返せば

そこから集中するように着付けが進められた。




< 94 / 142 >

この作品をシェア

pagetop