俺様主人の拾われペット
ザワザワザワ…
お店から神社はそう遠くなくて。
本当に歩いて数分の場所だった。
お店から出るとすでに浴衣を着た人たちがぞろぞろ歩いていて
お祭りの入り口に来る頃には人でいっぱいに混み合っていた。
「結構大規模なんですね…!」
「まぁそれなりにここらへんは人も多いしな…。」
と少し眉間にしわを寄せながらも
一緒に歩き進めてくれる仁美さん。
やっぱり人が多いところは好きじゃないみたいで。
でも手はしっかり握られたままだった。
それが無性に嬉しくて、自然と頬が緩む。
「何か食いたいもんあるか?」
「うーんと……焼きそば!食べたいです!」
「焼きそばか。…じゃああっちだな。」
身長が高い仁美さんの特権。
遠く先を見て焼きそば屋さんを見つけてくれた。
なかなか進まない上に
人が逆流してきて、歩き進めるのが大変だった。
「チッ……千夏、お前ここで待ってろ。
無理して歩かせても足痛めかねねぇしな。」
と、近くの出店と出店の間のスペースにて私に待つように言った。
そして仁美さんは1人で人混みを進んで行った。
(本当にすごい混んでるなぁ…。)
地元の祭りにしてはかなり規模がでかい気がするし…
有名なお祭りだったりするのかなぁ。
なんて考えてながら
目の前を歩いていく人達を見る。
…すると
「すいません、もしかして今1人だったりします?」
「…え…。」
出ました。
お祭りの中でたまに見かけるナンパ。
浴衣着て1人で来るわけないでしょって思うけど
愛想笑いをしながら軽く受け流す。
「それか迷子?あ、そうでしょ!
俺たち一緒に探してあげるからさ、これから行かない?」
「すいません、人待ちしてるので…。」
「そんなこと言わないでさぁ〜、ほら行こうよ〜。」
なんて言って背中に手を回して
私の体を前に押すように力を入れてくる。
(やだ…気持ち悪い…!)
やめてください、と言って男の人達から
離れようとした時---
「-------おい。」
(----------っ…!)
前からドスのきいた低い声が聞こえてきて顔をあげれば
彼らより身長の高い仁美さんが
見下ろしながら不機嫌そうに睨みながら立っていた。
「仁美さん…!」
「そいつの体から手を離せ。」
そう言って私の背中に回っていた男の手を捻りあげる。
その痛さに声を上げる男の顔を覗き込みながら、仁美さんが言った。
「次その汚ねぇ手で触ったら、折るぞ。」
仁美さんはそう言うと
睨みながら男の手を離し
私の手を掴んで歩き始めてしまった。