サヨナラの向こう側
「そうかな?」


「ま、ふたりにしかわからないことだからな」



そのあとは、ちょこちょこ話しながら4人で花火を堪能した。


千広だけは、不機嫌で黙ったままだったけど。




一瞬輝いて、美しい残像を残して散ってゆく花火。


なんだかせつない気持ちになるのは、はかなく消えてゆくのをずっと見ていたから?


それとも、先生と一緒に花火を見たいのに、かなわない夢だから?



フィナーレの花火は、大きいのが何発もあがって、すごくきれいだったけど。


夏が終わっちゃうんだな、と少しさみしくなった。



浴衣を返しに店へ戻る慶と私は、千広と恵未と別れて歩き出した。



「きれいだったね、花火」


「そうだな。


美久、夏休み終わったら、バイトやめるのか?」


「ううん、今までみたいにハイペースでは入らないけど、予定のない土日中心でやろうかなって思ってる」


「そっか、じゃあ予定のないさみしい美久のために、俺も土日に入ってやるよ」


「失礼だな、予定があるときもあるし。


っていうか、そういう慶こそさみしい週末なんじゃないの?」



言い返されると思って構えてた私は、何も言わずに足を止めた慶の顔を見上げた。




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