サヨナラの向こう側
20時すぎ、着替えて更衣室から出ると、慶が待っていた。



「さっきはびっくりしたよ、からかわないでよ」


「本気だよ」



慶の真面目な顔を見たら、嘘じゃないと思った。



「そんなこと、急に言われても・・・」


「じゃ、前もって約束すればいいんだ?」


「そうじゃなくて、私は好きな人がいるからって言ったよね?」


「知ってるよ。


俺も、諦めないって言ったろ?」




諦めないって、どういう意味?


相手が誰を好きでも、好きなままでいるってこと?


私には、まだわからないよ。


つきあったこともないし、千広とならふたりで遊びに行けるけど、それは幼なじみだからで。


お互い好きな人同士が遊びに行くのがデートじゃないの?




私のそんな疑問が顔に出てたのか、


「じゃ、来週の土曜日に決まりな。


店長には俺から話しとくから」


と、慶は強引に話を進めた。




何も言えなかった。




「遅いから送ってく」


慶は、私の返事も聞かずに店の外へ出た。


送ってもらうのは素直に嬉しいから、一緒に帰ることにした。



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