サヨナラの向こう側
そばにいてくれる人
だいたいの場所を伝えただけなのに。


慶は、ベンチに座っていた私を見つけてくれた。



「美久、だいじょうぶか?」



私を後ろから抱きしめてくれた。



なんだか、なつかしくて、あったかい。




「後ろ姿、ちゃんとチェックしてないから、恥ずかしいよ」


「じゃあ、こっち向けよ」



泣いているヒドイ顔なんて、見せられない。





「それはもっとイヤだ」


「気持ち、伝えたんだろ?」


「うん、でもダメだったよ」


「がんばったな」



慶は、それ以上は何も言わなかった。


ただ黙って、私を抱きしめていた。




どれくらい時間がたったんだろう。


もうすぐ日が暮れる。


あたりがほんのり暗くなっていた。




「ごめんね、もう、帰らないと」


「帰さないよ」


「えっ?」


「気晴らしさせてやるよ」




そう言うと、私の手を引っ張って、近くの駐輪場へ歩いていく。



「乗れよ」


バイクのヘルメットを投げられた。


「バイク乗るの初めてだから、怖い」


「心配すんな、飛ばさないから。


しっかりつかまってろよ」





言われるまま、バイクの後ろにまたがって、慶の腰につかまった。




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