サヨナラの向こう側
その日の夜。


月がキレイで、月明かりだけで歩けそうなほどだった。


バイト帰り、慶と二人で歩きながら、秋の夜を満喫した。



「美久、なんで俺を頼らないんだよ。


なんでも話してくれていいから」


「ありがとう、でも、なんて言っていいかわからなくて」


「・・・まだ、先生のこと、好きなんだろ?


無理に嫌いになることないんじゃねーの?


今までずっと好きだったんだし、いきなり気持ちを押さえるなんてできるわけねーし。


ま、俺としては、忘れてほしいけどな。


っていうか、俺が忘れさせてやりたい」



慶は、そっとそっと、まるで卵を持つ時のように、優しく抱きしめてくれた。



あったかい。



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