サヨナラの向こう側
「あれ、佐藤、ここでバイトしてたのか」


皆川先生が、そこにいた。


隣には、キレイな大人の女性がいた。



姉妹かもしれない。


友達かもしれない。


でも、たぶん、彼女だ。




「どなた?」


そう、先生にたずねる女性に、


「顧問やってる英語部の部長だよ」


とこたえる先生は、見たこともないような優しい顔だったんだ。



私は、笑って席にご案内し、注文を受けた。


彼女の左手薬指に、指輪があった。



コーヒーとカフェオレを運んだ時に、ふたりが見ていたのは、結婚式場のパンフレットだった。



幸せの絶頂にいるふたり。


私の入る隙間なんて、どこにもない。



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