サヨナラの向こう側
その日の夕方、バイト帰りに遠回りして、桜並木の続く道を歩いていた。


ここは、春になると、近所の人が集まってお花見できるような公園になっていて。


私も、小さい頃は千広の家族とうちの家族でお花見した。


お花見じゃなくても、ただピクニックしたり、遊びに来たり。


バドミントンしたり、自転車乗ったり。


そういえば、自転車乗れない私をからかいながらも、応援してくれてたのは千広だったな。


千広にも教えてもらって、乗れるようになった時は、うれしかった。



今ごろの紅葉の季節は、落ち葉のベッドでゴロゴロして、洋服が落ち葉だらけになって、楽しかったっけ。


中学生になると、さすがに部活とかで忙しくて、家族同士で出かけることはなくなったけど。


夏休み最後の花火大会だけは、なぜか慣例行事みたいに一緒に行ってたな。


今年は、千広は恵未と行って。


私は慶と行って。


そっか、今まで家族で行ってたのは、千広にも私にも特別な人がいなかったからなんだ。


そんな、懐かしいことを思い出しながら、落ち葉を踏むカサカサって音を楽しんでいると、電話が鳴った。


< 198 / 270 >

この作品をシェア

pagetop