サヨナラの向こう側
「美久は、俺とバイトで初めて会ったと思ってるだろ?


前も言ったけど、俺は高校のサッカー部で千広と一緒にいる美久をよく見てて。


よく笑う、かわいい子だなって思ってた。


でも俺は、佳菜子とつきあってたから、見てることしかできなかった。


千広との時間にはかなわないけど、俺だって美久が入学する頃から見てたから」



「なんか、すれ違いっていうか、うまくいかないね」



「うまくいくことばっかりじゃ、人生おもしろくないだろ」


「人生まで語っちゃうんだ」


「語るよ、俺は」


慶は、そこで初めて笑った。



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