サヨナラの向こう側
家までバイクで送ってくれて。


振り返って千広の部屋を見ると。


千広が窓から顔を出して、手を振っていた。


「千広、出てこいよ」


慶が呼ぶと、千広はすぐに降りてきた。



「慶先輩、ありがとうございます」


「俺は何もしてねーよ。


美久が決めたことだから。


千広、美久を泣かせたら、俺が奪い返すからな」


「泣かせませんよ」


「じゃーな、おやすみ」


「おやすみなさい」


「慶、ありがとう」




慶がバイクで走っていき、姿が見えなくなると。


千広は、私をギュッと抱きしめた。


「家から見られちゃう」


「いいよ、見られても。


知ってほしいし。


あー、心配しすぎて胃が痛い」


「何が心配だったの?」


「美久が、ちゃんと帰ってくるかどうか」


「帰ってくるに決まってんじゃん」


「やっぱり、慶先輩がいいってなるかもしんねーだろ」


「なるわけないでしょ、失礼だな。


私の気持ち、みくびらないでよ」


「信じてたけどな」







< 249 / 270 >

この作品をシェア

pagetop