サヨナラの向こう側
千広が連れて行ってくれたのは、海だった。


冬の海は、人も少ないせいか、静かに感じる。


手をつないで、景色を見ながら、たわいない話をして。


こういう時間を、愛しく思える二人でいたい。



海にせりだした堤防に座ると、海風が冷たい。


でも、冬の太陽が体をあたためてくれる。


「千広、誕生日おめでとう」


私は、プレゼントを渡した。


「色違いだよ」


と、いま私が巻いているマフラーを指差すと、


「マジで?


俺、そういうさりげないおそろいとか、してみたかったんだよな」


包装をといて、マフラーが出てくる。


「巻いてあげるよ」


くるくるマフラーを回していたら、ふと目があった。


千広って、こんな優しい顔で、私のこと見てくれてるんだ。


そのまま、お互いに引き寄せられるように、何度もキスした。


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