サヨナラの向こう側
その日から私は、図書室で勉強してから帰るようになった。


5月の夕焼け空は、もうすぐ訪れる梅雨の季節の前に、さわやかな風を運んでくれていた。



私が校舎を出て、下駄箱で靴を履き替えていたら、


「好きです、付き合ってください」


っていう、震えるようなかわいい女の子の声が聞こえた。



私が出ていったら、確実に鉢合わせしちゃう。


どうしよう。


気を使って隠れていた方がいいよね。



迷っていたら、


「ごめん。


俺、好きな人がいるんだ」


と、断る男子の声がした。



あ、フラれちゃったんだ。


私と一緒だ。


ますます出にくくなっちゃった。



そこで気づいた。




今の声、千広の声だよね?



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