サヨナラの向こう側

「やめろよ」


低いけど、力強い声がして、痴漢は腕をひっこめた。


声の主は、私の斜め前に立っていた、背の高い男性だった。


痴漢は逃げようにも、混んでいて動けない。



「だいじょうぶ?」


男性は、優しい声で私に話しかけた。


「はい・・・」


「次の駅で、一緒に降りよう」



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