サヨナラの向こう側
「ねえ、千広くん」


ホテル近くのショッピングモールへ向かいながら、新藤は腕を組んできた。



隣にいるのが、美久だったら。


俺は、くだらない妄想をしてしまう。


それに気づいているのかいないのか、新藤はいろいろ話していた。



「あそこのお店の雑貨、テレビで紹介されてたんだよ」


「ここのアイス、地元の人にも人気なんだって」



新藤には悪いけど、話はほとんど頭に入ってこなかった。


浮かぶのは、今日見た、皆川と美久のキスばかり。




「千広くん、お揃いのもの何か買わない?」


「いいよ」


新藤に悪い気がして、断れなかった。



美久とは、お揃いのもの買ったことなかったな。


いつも、いつまでも一緒にいられると思っていたから、そういう発想がなかったのかもしれない。





< 81 / 270 >

この作品をシェア

pagetop