サヨナラの向こう側
次の日。


バイト初日は、メニューもわからず、挨拶もうまくできず、店長たちに迷惑かけっぱなしだった。



でも、数日たつと、メニューもだいぶ覚えてきて、少しだけ慣れてきた。



カフェtimeは、店長・店長の奥さん・ふたりの娘の桃子さん、そして例の茶髪大学生バイト・松下慶(まつしたけい)でやっている、カウンター7席とテーブル2つのこじんまりした店だ。


桃子さんは27歳で、すごくキレイな大人の女性。


店長も奥さんも桃子さんも、みんな調理師免許をもっていて、料理もできて優しくて。



なのに、慶は私にとても厳しい。


同じミスをすると、休憩時間に怒られる。



「美久、さっきもそれ注意したろ?


カップの向きが逆」


「すみませんでした」



「常連の高橋さんのメニュー、間違えたろ?


高橋さんはブルマンだぞ」


「すみませんでした」


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